生姜の効果|料理人が伝える、昔ながらの生姜の知恵

生姜の効果を表すドット絵のアイキャッチ。勇者がポーションを掲げ、生姜のアイテムが光っている

友人が、こんな話をしてきました。

人の体は、食べたものでできています。

当たり前すぎて、普段は何も思わないし感じません。でも、ちょっと立ち止まると、結構おもしろいことを言っている気がします。

口に入れたものが、自分の一部になる。食べたもので、体の調子が変わる。

RPGでいえば、薬草を使えばHPが回復して、木の実を食べれば力が上がる、あれです。

ゲームの中やファンタジーの話だと思っていたことを、僕たちは毎日やっている。

そう言われて、一気に引き込まれました。

「効果」と書くとちょっと違って、なんだか嘘くさく感じてしまう。でも「エフェクト」と言い換えてみると、本当はこっちのほうが近い気がするんです。

サプリメントの話がしたいわけではありません。もっと前から、そのへんに生えていたもの。

その中で一番身近で、一番使い慣れていて、しかもちゃんと効く。それが生姜です。

生姜の力の正体——ジンゲロールとショウガオール

生姜の辛みと香りの主成分は「ジンゲロール」と「ショウガオール」という2つの成分です。生の生姜にはジンゲロールが多く含まれますが、加熱したり乾燥させたりすると、ジンゲロールの一部がショウガオールに変化します。

この2つの成分は体への働き方が少し違うと言われていて、ジンゲロールは殺菌の働きが、ショウガオールは体を温める働きが強いとされています。厨房で刺身のツマや薬味に「生の生姜」を使うのは殺菌作用を活かすため、冬場の温かい料理に「加熱した生姜」を使うのは体を温める働きを引き出すため。理屈を知らなくても、料理人は経験則としてこの使い分けを体で覚えているんです。

近年は、こうした昔ながらの知恵の裏側にある仕組みも、少しずつ研究で分かってきています。生姜には胃の働きを助けたり、体を温めて血流を良くしたりする働きがあることが、いくつかの研究で報告されています。ただし効果には個人差があり、体調がすぐれないときの自己判断は禁物です。気になる症状があるときは、まず医師に相談してください。

生姜の効果|ジンゲロールとショウガオールの違いを示した図
生の生姜はジンゲロール、加熱するとショウガオールが増える

昔から伝わる生姜の知恵① 風邪のひきはじめに、生姜湯

「風邪のひきはじめには生姜湯」というのは、日本の家庭で世代を超えて伝えられてきた、代表的な民間療法のひとつです。すりおろした生姜にお湯を注ぎ、お好みで黒糖やはちみつを加えるだけ。体がじんわり温まり、寝る前の一杯として親しまれてきました。

これは前述のショウガオールが体を温める働きと関係していると考えられていますが、あくまで昔から伝わる養生法のひとつであり、風邪そのものを治す薬ではありません。症状が長引くときや高熱が出ているときは、無理をせず医療機関を頼ってください。

毎回すりおろすのが面倒なときは、お湯に溶かすだけの生姜湯を常備しておくのも手軽でおすすめです。僕も忙しい日の夜は、あさの 生しぼりしょうが湯のような一杯ずつの個包装タイプを重宝しています。

昔から伝わる生姜の知恵② 肩こり・冷えに、生姜湿布

あまり知られていませんが、「生姜湿布」も古くから伝わる民間療法のひとつです。すりおろした生姜を布袋に包んで熱いお湯に浸し、少し冷ましてから肩や腰など気になる部分に当てて温める、という昔ながらの養生法です。

じんわりとした温かさが心地よく、湯たんぽ代わりに親しまれてきましたが、これも医学的な治療法ではなく、あくまで家庭で受け継がれてきた知恵のひとつです。肌が弱い方はかぶれることもあるので、様子を見ながら試してみてください。熱すぎるお湯を直接肌に当てないよう、温度にも注意が必要です。

漢方でも欠かせない存在——生姜(ショウキョウ)

生姜は、東洋医学の世界でも古くから重宝されてきた食材です。生の生姜は「生姜(ショウキョウ)」、乾燥させたものは「乾姜(カンキョウ)」と呼ばれ、数多くの漢方処方に配合される生薬のひとつとして知られています。葛根湯をはじめ、体を温めたり胃腸を整えたりする目的の処方に、生姜が使われている例は少なくありません。

何千年も前から人々が経験的に「体に良さそうだ」と感じ、使い続けてきた食材が、今も台所と薬箱の両方に居場所を持っている。生姜は、そんな息の長い食材だと思います。

生姜の選び方|無農薬とハウス栽培について

生姜は高知県が全国生産量No.1の産地で、熊本県などでも多く栽培されています。仕入れをしていると、無農薬栽培のものとそうでないものが混在していることに気づきます。実は生姜は「根茎腐敗病」という土壌の病気にかかりやすく、同じ畑で作り続けると被害が出やすい野菜です。そのため一般的な栽培では、農薬や連作を避ける工夫で病気を防いでいて、無農薬で作り続けるのは手間もリスクも大きく、他の野菜に比べて難しいとされています。無農薬の生姜を見かけたら、それだけ手をかけて育てられた貴重なものだと思って選ぶのもいいかもしれません。

また、生姜はもともと暑い地域が原産の野菜なので、寒さに弱いという特徴があります。露地栽培だと収穫は秋から冬にかけてが中心になりますが、ハウス栽培なら温度管理ができるので、初夏に出回る「谷中生姜」のような葉付きの若い生姜を早い時期から楽しめます。皮が薄くて辛みも穏やかな新生姜が好きな人は、ハウス栽培の早出しものを探してみるのも面白いと思います。

生姜の効果|無農薬の生姜が少ない理由と露地・ハウス栽培の違いを示した図
生姜は連作がしにくく、無農薬で作り続けるのは手間もリスクも大きい

料理人が実践する、生姜の使い分け

生姜の力を暮らしに取り入れるには、生と加熱の使い分けが鍵になります。厨房では、目的によって生姜の使い方を変えています。魚料理の下ごしらえや薬味には、殺菌作用を活かしたいので「生の生姜」をすりおろしたり千切りにしたりして使います。体を温めたいとき、冬場の煮物やスープには「加熱した生姜」を使うことで、ショウガオールの働きを引き出します。

自宅で取り入れるなら、朝は生の生姜をお味噌汁やお浸しに、夜は加熱した生姜湯や生姜を効かせた煮物に、というように使い分けてみると、昔から伝わる生姜の知恵をより実感しやすいと思います。

まとめ|生姜の効果は、台所の棚にある

生姜湯、生姜湿布、そして漢方の生薬としての生姜——どれも科学が発達するずっと前から、人々が経験を積み重ねて受け継いできた知恵です。もちろん、これらは病気を治す治療法ではなく、昔から親しまれてきた養生法のひとつとして向き合うのがちょうどいい距離感だと思います。体調が気になるときは、無理をせず専門家を頼ってください。

そのうえで、最初の話に戻ります。

冷蔵庫の野菜室に転がっている、あの土のついた塊。あれはゲームでいえば、道具屋の棚に並んでいるものです。使えば何かが起きる。生で使うか、火を入れるかで、起きることも変わる。

僕たちは、ずいぶん前からその世界に住んでいます。

今日の晩ごはんから、ひとかけ使ってみてください。

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