沖縄の海と日本海、同じ「しょっぱい」でこんなに違う
以前、旅先の沖縄で海を泳いでいて、口に入った海水の味に驚いたことがあります。塩辛いはずなのに、どこか甘みを感じて、思わず吐き出したくならない。逆に、自分が暮らす地域の日本海で同じことをすると、強い塩辛さが際立って「ぺっ」と吐き出したくなるほどでした。
同じ「海水」でも、場所によってここまで味が違う。この体験がきっかけで、塩という調味料そのものの個性にあらためて興味を持つようになりました。
食塩をやめた理由
以前は、どこの厨房にもある精製された食塩を普通に使っていました。しかし使い続けるうちに、いくつか気になる点が出てきました。まず、香りが良くない。そして、塩本来の甘みがほとんど感じられない。極めつけは、食塩で仕込んだ魚の日持ちが悪いことでした。
精製度の高い塩は、ミネラル分がほとんど取り除かれています。そのミネラルこそが、魚を傷みにくくし、味に深みを与えてくれる要素だったのだと、後になって実感しました。
ニガリを含む天日塩を選ぶわけ
今、普段使いのベースにしているのは、ニガリを含む天日塩です。精製塩と違ってミネラル分が残っているぶん、魚の保存性が上がり、味わいにも深みが出ます。同じ「塩味をつける」という工程でも、どの塩を使うかで仕上がりがまったく変わってくるのが、この仕事を続けていて実感するところです。
赤穂の塩とあらしお、使い分けのコツ
天日塩の中でも、用途によって粒の大きさを使い分けています。粒の細かい赤穂の塩は、魚に軽く振って水分を引き出しながら下味をつける「振り塩」に使います。細かい粒だからこそ、均一にムラなく振ることができます。
一方、粒の粗い「あらしお」は、料理の味付けや鮨酢に使っています。粗い粒はゆっくり溶けるぶん、味の入り方がまろやかで、酢と合わせたときの馴染み方も違ってきます。
常識を覆す、ヒマラヤ岩塩の使い方
少し意外に思われるかもしれませんが、ヒマラヤのイエローソルト(岩塩)を削って、握り寿司の味付けに使うこともあります。使うのは、脂ののった魚やイカ、貝など、まろやかな塩味との相性が良いネタです。
「魚には海の塩を」というのが一般的な考え方で、岩塩を使うのはタブーのように思われがちです。ですが実際に使ってみると、岩塩特有の柔らかい塩辛さが、繊細な魚介の味をかえって引き立ててくれることに気づきました。塩は「塩辛さの強さ」だけで選ぶものではなく、素材との相性で選ぶものだと、この経験から学びました。
まとめ
沖縄の海と日本海で感じた味の違いのように、塩は同じ「しょっぱい調味料」でも、産地や作り方によって個性がまったく異なります。振り塩には粒の細かい天日塩、料理の味付けには粒の粗い天日塩、そして繊細な魚介には岩塩と、目的に合わせて使い分けることで、料理の仕上がりは大きく変わります。
ご家庭でも、いつもの食塩を天日塩や岩塩に変えてみるだけで、素材の味の感じ方が変わるはずです。まずは普段の一品から、試してみてください。






